仲井雅光 司法書士事務所

仲井雅光司法書士事務所は小田急線愛甲石田駅前の司法書士事務所です。

TEL.046-281-9025

〒243-0035 神奈川県厚木市愛甲2-12-1 今福ビル301号

月次記事

遺言書のすすめ
                                 令和2年1月22日

 皆さんは遺言書に対してどの様なイメージをお持ちでしょうか? Wikipediaによると、「死後の法律関係を定めるための最終意思の表示」とありまして、遺言者の財産をどの様に処分するかという点で非常に重要な書面となります。

 日本人にとって、被相続人の財産は相続人の財産と考える人が多いかもしれませんが、本来、被相続人の財産ですから、これをどの様に使うかという点については、自由であるべきで、相続人の誰にどの様に相続させるのか、あるいはさせないのかは、被相続人の意思を尊重すべきであると私は思います。

 しかしながら、日本には、長らく「家制度」が存続していました。歴史を振り返れば、家の財産、つまり家督は嫡男に引き継がれるという事が慣習あったと思われます。明治時代になって、民法(いわゆる旧民法)が制定されましたが、この中の条文でも家督相続の考え方が一つの柱になっています。

 戦後、新憲法が制定され、民法もそれに伴って改正されました。家制度は否定され家督相続の制度はなくなりましたが、被相続人の財産は相続人に引き継がれるという考えは変わっていない様に思います。家制度はなくなっても、年老いた親は息子、娘たちに扶養してもらわなくてはならず、親の財産は、相続人である息子や娘たちに相続されるというのが一般的かと思います。

 そのため、息子達からすると、ともすれば親の財産は自分の財産であると錯覚する傾向にある事も間違いないと思います。しかしながら本来遺産は被相続人の財産であり、処分権限は、被相続人が持っている事は当然のことであります。そしてその意思表示の制度が遺言なのです。いわゆるシニア層の方に対しては、認知症等でご自分の意思能力が低下売る前に、是非とも、遺言書を書いて頂いて、死後における財産の処分の意思表示をして頂く事をお薦めします。

 とは言っても、配偶者と息子さん、娘さんへの相続の場合は、まだ大きな問題は生じないと思います。重要なのはお子さんがいらっしゃらない場合です。お子さんがいらっしゃらない場合(多くの場合、ご両親等直系尊属もいらっしゃらないと思います)、ご自分が亡くなると、相続人は、配偶者とご兄弟になります。ご兄弟が既に死亡されていた場合には、死亡されているご兄弟のお子様が相続人になります。ご兄弟と雖も別の家庭をお持ちになって生活されていると、お付き合いも疎遠になってしまいます。

そういった中で相続が始まると、遺産は配偶者とご兄弟の共有状態(遺産共有)になり、簡単に処分ができなくなります。遺産が居住用不動産だった場合には、兄弟である相続人から、相続分の放棄に代わる代償を求められる可能性もあります。

 被相続人にとっては、ご自分が死亡した後、配偶者の方が幸せに過ごせる事が大きな希望だと思います。その様な場合には、生前に遺言書を書いて頂き、全ての財産が配偶者に相続される様にして頂くのが良いかと思います。また相続人が、お子さん等の直系卑属、ご両親の様な直系尊属の場合には、遺留分と言って相続人が法定相続分の一部を要求できる遺産に対する権利がありますが、ご兄弟には遺留分がありません。従って遺言書さえ書いておけば、配偶者に全財産が相続される事になるので、残された配偶者が困る事はありません。

 遺言は、自ら手書きで書く自筆証書という形式がありますが、安易にお薦めできません。というのは、遺言は要式行為と言って、①全文自筆、②日付・氏名を書く、③押印するという3つの条件を満たさないと法律的に有効になりません。従ってせっかく遺言を書かれても無効になる恐れがあります。また、有効な遺言であっても、相続開始後、家庭裁判所における検認手続きが必要になります。

 そういう意味で、公証役場の費用や作成を依頼した司法書士の報酬が掛かりますが、公正証書にて作成するのが間違いないです。但し、遺言者は、公証人の前で遺言書の内容を述べる必要がありますので、少し認知機能が低下している人は難しい場合があります。